デノスマブ無効例についての考察


当クリニックではQUS法(定量的超音波法)で踵骨の骨密度を測定している。私が開業した20年ほど昔にはエルカトニンと活性型ビタミンDぐらいしか治療薬がなかったが、その後ビスフォスフォネート製剤やSERM(選択的エストロゲン受容体モジュレーター)などが発売され骨形成と骨吸収抑制の2面的な治療ができるようになった。さらに現在ではデノスマブやPTH製剤なども骨粗鬆治療に応用できるようになった。

簡単に述べると骨形成、すなわち骨芽細胞に作用するのがビタミンDやカルシウム製剤である。ビスフォスフォネート製剤やSERMあるいはデノスマブは破骨細胞に作用して骨吸収を抑制する薬剤である。つまり骨からカルシウムを抜けていくのを抑制するする薬剤なのである。PTHは持続投与した場合は骨吸収を示すが、間欠投与にすると骨形成促進作用を示す。特にテリパラチド(商品名:テリボン、フォルテオ)は非常に強力な骨形成促進作用を示すとされている。

骨粗鬆症治療においては、これらの薬剤を単独もしくは併用して行うがビタミンD(現在では活性型ビタミンD)とカルシウム製剤では高カルシウム血症を示す可能性が高い。よって老人の骨粗鬆症では破骨細胞が活発に活動し、骨粗鬆症を生じているので基本的に破骨細胞を抑制するビスフォスフォネート製剤、SERM、デノスマブを併用することになる。

治療効果の判定はQUS法を年2度行い判定するが、効果がない場合、骨芽細胞系に問題があるのか骨吸収系に問題があるのか調べることが必要である。骨形成系ではBAP(骨型アルカリフォスファターゼ)の高低を、骨吸収系ではTRACP-5b(骨型酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ)の高低で、どちら側に問題があり骨密度が改善しないのか判断する。

まず破骨細胞を抑制する薬剤でTRACP-5bを良く抑える薬剤の順番は①デノスマブ ②ビスフォスフォネート製剤 ③SERM の順であった。これら薬剤の内デノスマブは専用のカルシウム・天然型ビタミンDの合剤(デノタス2錠)を併用内服する必要性がある。デノタス錠は2錠でカルシウム610g、天然型ビタミンD400IUを含む。日本人の平均カルシウム摂取量は400mgとされているのでデノタス2錠とあわせると約1000mgになり、骨粗鬆症治療に必要なカルシウムは十分量であると考えられる。

ところがデノスマブとデノタスの併用でも骨密度が改善しない症例が散見する。調べるとBAP低値であり骨形成不良の状態であった。カルシウム摂取量は十分であるので、これらの症例ではデノタスに代えて沈降炭酸カルシウム3錠(カルシウム600mg)にエルデカルシトール(商品名:エディロール)を使用して経過を見ている。

もしデノスマブ+エルデカルシトール0.75μg+沈降炭酸カルシウム3錠(もしくは4錠)でも骨密度が改善せずBAP低値が続く場合にはPTH製剤に変更するしかない。ただPTH製剤の最大の問題はコンプライアンスが極めて悪いということである。週1回、医療機関に足を運んで注射を打つか、毎日自己注射をしなければならないのだ。患者にとっては面倒極まりない。

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デノスマブ+デノタスで骨密度が改善しない理由としては、体内でのビタミンD活性化がなされていないというより、歩行しないことにより骨芽細胞刺激が行われないか、刺激が極めて弱いせいではないかと想像する。もちろん動物性タンパク質の不足により骨コラーゲン供給が少ないというようなことも骨粗鬆症の原因のひとつであることは間違いない。つまり骨粗鬆症治療とは適度な散歩(骨芽細胞刺激)と十分な動物性タンパク質の摂取(骨コラーゲン供給)、そしてその上での骨粗鬆症治療薬であろう。

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