ECWとICWの微妙な関係


生理学的に健常者ではECW(細胞外液)とICF(細胞内液)は一定の割合になるような仕組みになっている。その割合は体水分量の38%がECWで、62%がICWとされているようだ(InBodyの説明書より)。ところが、これには変動があり浮腫性疾患などが出現するとECWの割合が増大する。すなわちTBW(総体水分)におけるECW/TBWが増大し40%を超えると浮腫傾向もしくは浮腫となる。

しかし実際には問題があった。当クリニックで使用中のタニタの体組成計はECW/TBWが高めに出る。そのため補正を行う必要があった。補正に用いるのは採血による血算データであるRBCとMCVによる補正だ。

RBCは循環血漿量が増すと減少する。つまり浮腫性疾患ではECWが増し、血漿ならびに間質液は増加する。逆に普通脱水では血漿が濃縮してRBCは増加する。すなわちRBCの変化が血漿量すなわちECWの変化の目安になる。

ところで体組成計を利用した結果、MCVはICW浮腫の目安になる。すなわちMCV増大はICW浮腫であり、逆にMCV低下はICW脱水ともいえる状態だと考えるに至った。むろんフェリチンやビタミンB12などが正常であることを確認した上での話だが。

例えばRBCが400→440万/μLに変化した場合は単純に10%の血漿が減少した、つまり10%のECWが減少したことになる(ただしアルブミン値にもよるが)。逆にMCVが90→99に変化した場合、ICWが10%増加したことになる。

赤血球細胞は1個の細胞で、組成はICF(細胞内液区分)の通りだとすればMCVの変化は細胞内の水の増減を反映したことになる。すなわちMCV大は浮腫、MCV小は脱水を意味する。アルコール多飲者はMCV大のことが多いが、これは脳浮腫などを含む細胞内浮腫と説明できる。

RBCが多い症例にMCV小の例が少なくない。これはRBC大ということは血漿量が少ない、脱水気味ともいえる状態であり、かつ38%の法則があるならICWは小になりMCV小に傾く。簡単にいうと脱水気味のECWに付き合ってICWも脱水になっているといった感じだ。この場合、体水分は全体的に少なくなる。

だからSGLT-2阻害剤を使用した場合、初期にはECWの浸透圧が減少するためICWは拡大しMCVは増加する。しかし服薬期間が長期に渡るとECWの量が減少し、生理学的38:62の法則が作用するためICWも減少し、結果としてMCVは低下に転じICWは縮小する。すなわちRBC増加とMCV低下であり総体水分量の減少をまねく。

ところで当院の在宅で診ているNASHの患者がRBC低下とMCVの増大を認めている。当初はビタミンB12や葉酸の不足もしくは利用障害を考えたが、ひょっとすると続発性アルドステロン症があってECWの増大が先行しICWが増大したのではないかと考えるに至った。ちなみに、この患者の血清クレアチニン値は正常で、かつBNPも正常である。

また当院の外来通院中の腎不全患者は浮腫がひどいので体組成を調べた。タニタのぼんくら機械はECW16,05kg、ICW21.55kg、TBW37,6kgと測定した。この患者の身長は153.7cm、体重52.3kgである。ECW/TBWは43%との結果を得た。私の場合、171.5cm、体重71kgでECW14.9kgとICW21.05kgである。そのECW/TBWは42%と表示された。

その患者の場合、タニタのぼんくら体組成計では%体水分量は72%であったが、私は53%である。この患者の場合、腎性貧血がありRBCでのECWの補正ができないが、推定アルブミン値で補正した場合、ECWは10.6kgであった。

そうなると適正なICWは1.61倍すなわち17~18kgになる。この患者では腎不全による腎性貧血がありRBCでは補正できないがアルブミン値で補正したところ理想TBWは29kg前後になる。つまり10kg近くの水分過剰である。

この件からも想像できるが浮腫性疾患の場合、ECWだけ増加するのではなくICFも増加する。その上でECW/TBWでありECWとICWは微妙な関係にある。つまり浮腫性疾患が存在するからといって常にECW/TBWが高値を示す訳ではないということが、体組成計を使用してみて判明した。

すなわち透析患者のドライウエイト決定にETW/TBWを用いたり、心不全などでBNP値を参考に利尿剤を用いたり、あるいはHbA1cだけで糖尿病にSGLT-2阻害剤やビオグリタゾンを用いる場合、RBCやMCVあるいはアルブミン値を参考に体組成計の嘘を見極める必要がある。もちろんフェリチンやビタミンB12や葉酸値は基本的に不足していないことを確認した上で、であるが。

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