重症Ⅱ型糖尿病治療における多剤併用の意味と目的

先日、診療報酬支払基金の突合点検で減点通知が届いた。問い合わせをしたところ薬が多すぎるという指摘を受けた。しかし現在、重症Ⅱ型糖尿病患者の治療には数種類の抗DM薬の併用が基本になる。例えばⅡ型糖尿病の治療の基本は栄養指導が基本になるが、その上で抗DM剤を使用する。世界的にはメトホルミンがコストの点でも第一選択薬になるが、日本ではケトアシドーシスの発症が懸念されSU剤から治療が開始されることが多い。

しかしSU剤はインスリン分泌を刺激する薬剤であり長期に、かつ最大量を使用した場合、膵臓のインスリン分泌細胞は疲弊し、最終的にはインスリン分泌が枯渇してしまう。こうなると、近い将来いわゆるインスリン療法(インスリンを1日3~4回皮下注射)に移行してしまう。そこでインスリン分泌を長期に渡り維持するような治療を選択してやる必要がある。もしSU剤を用いた場合でも最小限に留めなければならない。

ここ20年でインスリン分泌すなわち膵外分泌を刺激しない抗DM薬が数多く発売された。

現在では膵外分泌を刺激しない方法でⅡ型糖尿病を治療することが主流である。まずビオグリタゾンは肥大した脂肪細胞を分割小型化してインスリン抵抗性を改善せしめ自分のインスリンの効果を高める薬剤だ。ただ量が多いと浮腫を形成する。SGLT-2阻害剤は尿中に過剰なブドウ糖を排出する薬剤である。ただ量が多いと脱水症を生じる可能性がある。

メトホルミンは糖新生を抑制することで高血糖を改善せしめる効果がある。超短時間インスリン分泌促進剤はインスリン分泌を刺激し短期間つまり食後過血糖を抑制する。メトホルミンと超短時間インスリン分泌促進剤は作用時間が短く24時間の高血糖に対応できない。DPP4阻害剤は24時間の糖新生を抑制することによって1日中の高血糖を抑制することができる。

今回、突合検査で減点された患者はSU剤(オイグルコン2.5mg×2錠)、DPP4阻害剤(ジャヌビア50mg)の併用でもHba1cは9.6%以下に改善しなかったので1日1回のインスリンアナログ製剤(ランタス)によるインスリン補充療法を併用した。しかしランタスの量が多くなかったこと(8単位)と「注射が嫌」ということでDPP4阻害剤、SGLT-2阻害剤、メトホルミン、超短時間インスリン分泌刺激剤、ビオグリタゾンなどを状態や病期をみながら多剤併用した。

この患者、Ⅱ型糖尿病で10年以上の経過を有しておりインスリン分泌はやや低下している。よって多剤併用の上に少量のSU剤を加えて現在Hba1cは6.8~7.0%にコントロールしている。膵外分泌の長期に渡る維持はインスリン導入を回避するだけでなく、膵臓癌発症のリスクも軽減できる可能性もある。もしあなたが糖尿病になって、インスリンを1日4回打たなければならなくなったら、どう思いますか?

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もし医療費の削減を目指す目的の突合検査で糖尿病に対する多剤使用を責めるのであれば、内科における湿布などの外用薬やカタリンなどの点眼薬の漫然処方を取り締まった方が良いと考える。昨年あたりからセルフメディケーションという言葉が広まりつつある。たとえば内服薬でもガスター10、スクラルファート、アレジオン、アレグラなどがTVのCMでばんばん放送されている。すなわち医療機関を受診しなくても軽症なら保険証を使用せずとも治療は可能だ。それでも良くならない症例は医療機関を受診すれば良い。

われわれ医療者も社会保障費の膨張を懸念しているが、必要と思われる検査や治療は支払い基金から文句を言われても、行わなければならない。しかし当院では3か月前より漫然とした湿布や目薬などの外用薬の処方を中止する方向でいる。ただセルフメディケーションシステムがあまり知られていないので受付で文句を言われることが少なくない。今後はセルフメディケーション制度で、後日お金が戻るということを、もっと宣伝してほしいと思う。

なお、セルフメディケーション税制については下記を参考に。または役所の税務課等に問い合わせてほしい。

※出典:厚生労働省ホームページ(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000124853.html

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