起立性低血圧症と反射性高血圧症


先日、大動脈弁閉鎖不全症(ArⅢ°)の患者が早朝眩暈発作を度々、訴えた。農家の70歳代のご婦人で朝食もそこそこに朝から農作業をしている、その際に眩暈発作を生じたという。その後、自宅に戻り血圧を測定したところ収縮期血圧が160mmHgを超えるという。そのせいか高血圧による眩暈症と患者も救急医も考えたようだ。

答えは、Arによる心拍出量の減少が原因の起立性低血圧が原因だ。早朝は塩類欠乏性脱水症の時間帯である。空腹時でも食直後でも脱水症的状態にある。この時、農作業をしたり運動をすると心拍出量減少により脳循環血液が不足し、結果として起立性低血圧が原因となり眩暈症を生じる。その後、低血圧症に対して交感神経が刺激され、カテコラミン類が分泌亢進を生じ反射性の高血圧を生じる。

食事直後は体内血流分布的に胃に集まり、脳や四肢への血流量は減少する。食事に含まれる水分と塩分が血液中に充足するには1時間程度の時間を要する。この症例でいうなら、朝飯前や食直後に農作業をしないことであり、働く場合には少なくとも食後1時間を待たねばならない。今は、そのように指導している。

このような起立性低血圧症を呈するケースとしてはペースメーカー心、慢性心房細動、糖尿病や境界型糖尿病でも起こり得る。糖尿病の場合、高血糖時に高浸透圧利尿が促進され塩分欠乏性脱水症を生じるためと説明できよう。SGLT-2阻害剤が発売されて尿中にブドウ糖が排出されるが、その際に相当のナトリウムも尿中に失われることが明らかになった。

特にCGM(24時間連続血糖測定)の結果を見てみるとHbA1cは6.0~6.5%と良好な患者でも食後1時間前後の血糖値は250~350mg/dlまで上昇していた。おそらくその際、過大にインスリンが分泌され3時間後の血糖値は100mg/dlを下回る。この高血糖の際、利尿は促進されナトリウムが喪失し塩分欠乏症を生じる。血液中の低浸透圧は細胞内液への水の移動を促すので循環血漿量は短時間で喪失する。結果、起立性低血圧症を生じると想像する。

Ⅱ型糖尿病の患者では初期の場合、インスリン分泌は不足せず、むしろ過剰な場合がある。それはインスリン抵抗性が亢進し耐糖能障害を呈している場合だ。先日、眩暈症で駆け込んできた軽症糖尿病の50歳代の女性は朝食を漬物と白飯だけで済ませて養殖ワカメの作業中にグラついたと語っていた。漬物と白飯だけでは食後過血糖を生じ、その後低血糖に転じる。

糖尿病の食事療法の基本は炭水化物を大量に摂取しないことであり、炭水化物を摂取する場合には脂質、タンパク質、繊維質をまず摂り、最後に炭水化物を少量摂取することである。食後過血糖と過剰なインスリン分泌を回避するには、それしかない。

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追伸:この患者の治療に1回フルクトース3gに食塩1gを加えた散薬を作り200mlの微温湯に溶きスポーツ飲料のように仕立て1日3回飲用させた。1週間後、症状は消失し畑仕事もできるまでに回復した。その元気な状態でタニタの体組成計MC-180で体組成を計測した。その結果ECW/TBWが47%と高値を示した。

ECWとは細胞外液量でありTBWとは全体水分量である。InBodyでは38%を基準にしているがタニタでは男性40~41%、女性41~42%が基準とされている。なので47%というのは浮腫が疑われたのだ。そこで脛骨前面を圧迫したが浮腫は存在しなかった。ただデータをよく見たらICW(細胞内液量)が減少していた。すなわちICWが減少していたためTBWが減少し相対的にECW/TBWが高値を示していたのだ。

ECWは充足され循環動態は安定し起立性低血圧を生じることがなくなった。しかしICWは不足している状態が続いているといった体組成状態であると推測された。

IGTや初期糖尿病ではインスリン分泌は正常もしくは亢進していることがある。インスリン抵抗性であったりインスリン分泌の遅れ(タイムラグ)があったりする結果、高血糖による高浸透圧や低血糖による低浸透圧が出現してECFとICFの水のバランスは崩れECFとICFの両方が不足する「総脱水」の状態も生じ得る。

起立性低血圧はECWの不足による循環血漿量が減少して循環器系の基礎疾患などがきっかけとなって生じる。過度の減塩はECWの不足を助長する可能性があるので、過不足なく塩分を摂取させることが肝心だ。特に夜~朝食後までECW不足になりやすいので寝る前の梅干し水の摂取が必要になる。

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