フォシーガ錠「エキスパート対談Vol.4」より要点


テキサス大学のDeFronzo先生がSGLT-2阻害剤使用時の脱水について説明している。(以下抜粋)

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「SGLT-2阻害薬投与下ではグルコースとともにNaも排泄されることから、脱水の危険性を懸念する声が聞かれますが、これには誤解も含まれています。

今回のケースにおいては、そもそも「脱水」ではなく「循環血液量の減少」と表現しなければならないことがしばしばみられます。腎臓の役割は循環血液量を一定に保つことであり、SGLT-2阻害薬投与によってNaバランスがわずかにマイナスに傾いても、すぐにそれを是正するためのフィードバック機構が働きます。すなわち、ヘンレループと遠位尿細管でのNa再吸収が促進され、Naの不均衡は数日で是正されます。

もしこの程度での不均衡で「脱水」になるのなら、もっと大きな不均衡を引き起こすループ利尿剤など使えないはずです。(以下省略)」

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やはりNaは体外に排出されている。長期SGLT-2阻害剤使用時のHtの上昇が物語っている。循環血液量のマーカーとしては血清アルブミン値の方が短期的に有用だが長期にみるとHtなど赤血球系のマーカーが循環血液量を反映する。透析患者では腎性貧血があるため赤血球系のマーカーがあてにならないがSGLT-2阻害剤使用時のHtの変化は循環血液量の変化を反映している。しかしループ利尿剤と異なり腎血流量減少による急性脱水すなわちクレアチニン上昇とは異なるが、体内から水とNaは減少することは間違いない。

同じVol.4に埼玉医大の松田先生が「実際に使ってみると、半減期は最も長いものでも15時間、短いものでは5時間程度であるにもかかわらず、尿中への糖排泄は投薬を止めた後も2~3日にわたって持続していました」と記載されている。すなわちループ系利尿剤などとは異なり作用時間がとても長いということだ。腎虚血をきたすほどの急激な循環血液の減少はきたしにくいが長期間にわたって血糖値に依存して利尿作用がだらだら続くということだ。

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ただ問題点は存在する。Naの不均衡が是正されるのに数日を要するという点だ。すなわちSGLT-2阻害剤使用中にNaの不均衡があり細胞外脱水や細胞内浮腫を生じている可能性があるということだ。例えばHtが上昇するという状態はNaの不足を意味している。もしHtが上昇してかつ体重増加があれば細胞内浮腫を、逆にHtが不変で体重減少があれば細胞外脱水ということになる。

細胞外脱水はクレアチニン上昇、すなわち可逆性腎機能障害というべき病態であり、細胞内浮腫の代表は脳浮腫である。それが浮動性眩暈症と称される症状を生む。SGLT-2阻害剤使用にはNaを積極的に摂る必要性がある。ただ脳浮腫はSGLT-2阻害剤を中止し塩を多く摂ってもすぐには改善しない。それは浸透圧センサーが監視しておりNaを過剰に摂っても細胞内外の水の移動には時間を要する。

もし脳浮腫の対策が必要ならNa以外の浸透圧提供物質が必要であり、それがイソソルビドゼリー(商品名メニレット)である。Na以外の浸透圧物質でメニエル病や脳圧亢進時に用いられる。この時、グルコースは細胞内外に均等に存在されるため脳浮腫の治療薬には向かない。ただメニレットの長期連用は低Na血症の原因にもなり得るので注意が必要だ。(なおメニレットは理論的にアルコール性脳浮腫にも有効である。)

また、このVol.4では体重減少の下げ止まりの理由として「食欲が刺激されるためであろうと推測する」とあるが、この理由は異なる。糖質制限食を長期に続けた際に見られる代謝へのブレーキだ。SGLT-2阻害薬はブドウ糖を体外に排泄するということで糖質制限とよく似ている。ブドウ糖が不足し体脂肪が減少すると代謝にブレーキがかかる。すなわち甲状腺ホルモンは当初に比し低下する結果、体脂肪の減少が下げ止まるためだ。

エネルギー代謝学から説明するとそうなる。エネルギー代謝学とは甲状腺治療学や内分泌学とも違い体脂肪や内臓脂肪を減らすために研究する学問だ。NASHやNAFLD、糖尿病、肥満治療をエネルギー代謝から研究する学問であり、世界中のどこの大学にも存在しない。私が勝手に名づけた学問である。エネルギー代謝から糖質制限の問題点、カロリー制限の問題点などや肥満や痩せなどを研究する学問である。

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