閑話休題(透析の話)

私はかつて透析病院に勤務していた。20年も前のことなので細かい点は忘れてしまったが、無尿の腎不全患者が透析終了時から次の透析までに増加する体重は全て細胞外液が分担すると記憶している。つまり体重増加は摂取したナトリウムに正比例して飲水行動が行われ細胞内液と浸透圧でイコールとなる。

厳密には尿素窒素、カリウムなども浸透圧上昇に寄与するが透析間の体重増加は塩と水であり基本的にはナトリウムすなわち塩分摂取量に正比例する。糖尿病患者でも血糖値が一時的に、あるいは断続的に上昇すると口渇が出現する。結果、飲水行動を取る場合が少なからずある。

透析では大体、体重増加分の2~4L程度除水するが、透析前には血清アルブミンは希釈されて低値を示す。そして透析直後には血液は濃縮して高アルブミンを示すことが多い。透析用語で透析直後の体重をドライウエイト(乾燥体重)と呼び、軽度の脱水症の状態と説明される。逆に透析前後でアルブミン値の変化がなければ除水不足と判定される。

これはドライウエイトの設定ミスが1番の理由だ。しかし心不全が存在すると透析中すなわち体外循環時に心臓が耐えることができず(心拍出量が維持できず)血圧低下を招くことも少なからず存在し、結果、血清アルブミンの変化が乏しい場合もある。

また心臓に問題がなくても透析間の体重増加が大きく時間あたりの除水量が多いと抵抗血管と称される末梢血管に虚血を生じ、透析中に一過性の低血圧を生じる場合がある。もちろん糖尿病の透析患者が低血糖より浸透圧低下をきたし血圧が低下する場合も存在する。

もし透析中に血圧低下をきたす場合には除水を一時的に中止して10%NaClを20ml投与して細胞外液の浸透圧を上げ血圧の回復をはかるのだ。低血糖があるなら50%ブドウ糖を入れてやっても良い。いずれにしても透析中は細胞外液の浸透圧を維持すれば安定した透析が可能になる。もちろん稀ではあるがアルブミンを投与し膠質浸透圧を上げて透析を行うこともある。

糖尿病患者にSGLT-2阻害剤を投与した場合、血糖値に比例して利尿効果が変化する。すなわち血糖値が400mg/dlの時と、200mg/dlの時、さらに100mg/dlの時では効果が異なる。もちろん薬効を考えれば、この3つの血糖値の中では400mg/dlの時の利尿作用が一番高い。

それゆえ同じ糖尿病治療中の患者でもHba1cに関係なく食後に極端な高血糖を示す患者については以前にも述べたがαGIや即効型インスリン分泌促進薬の併用も必要になろう。急激な血糖値上昇があればSGLT-2阻害剤がヒットして利尿が過度に亢進すると予測される。それを軽減するために、その2剤を用いるのだ。

もしSGLT-2阻害剤を投与により過度に利尿が亢進して、急激な脱水による眩暈や頻脈が出現する場合には、食事の際か、食事の前に塩分を与える必要性がある。過度に利尿が亢進した場合にはナトリウムもそれなりに失われる。すなわち一過性に低血漿浸透圧状態に陥っている。

何故、食事前の塩分摂取かというとナトリウムの吸収に時間を要すると考えるからである。スープ状の食品ならまだしも、一般のハンバーグや焼肉、中華などの食品はその消化に時間がかかる。ナトリウムはブドウ糖に比べ吸収に時間を要すると考えられるからだ。

そう考えると、朝食は和食が良い。味噌汁、納豆、お新香など塩分が多い。パンとミルク、サラダでは塩分が少ない。SGLT-2阻害剤を使用する場合、高血圧学会等で推奨される1日塩分6g以下は、とりあえず無視した方が良さそうだ。

・・・・・

ところで透析患者では透析前の血ガス所見でSaO2が100%を切っている場合、肺水腫の可能性がある。通常、透析患者では重炭酸の不足で代謝性アシドーシスに陥るが、過剰換気すなわち呼吸性アルカローシスで代償する。肺水腫のない透析患者では基本的にSaO2は100%をすこし上回る。

とくに僧房弁閉鎖不全などが存在する場合、透析前に体液過剰により弁膜症が悪化し、自覚症状の出現に先駆けてSaO2低下という形で現れることがあるのだ。すなわち初期の間質性肺水腫の所見なのである。