当クリニックの骨粗しょう症治療

当地区は日本の東北太平洋側に位置し、おそらく日本でも有数の骨粗しょう症の多い地域である。原因は乳製品摂取不足や地下水が軟水であることによるカルシウム摂取不足、肉類不足による動物性タンパク質不足、塩分過剰摂取によりカルシウム尿中排出の増大、多産ならびに授乳でのカルシウム喪失、全身を覆う作業着による日光の照射不足などが上げられる。

そのため当地域での骨粗しょう症は比較的若い年齢から出現する。もちろん更年期以降の女性では高率で骨粗しょう症もしくは予備軍である。当クリニックでは超音波骨密度測定器を用いて骨粗しょう症を診断しているが、超音波測定器の精度的な問題はあるが60歳以上の約8割は骨粗しょう症に該当する。そのため治療の対象になる例は相当数にのぼる。

まず当クリニックの治療はカルシウム高含有食品(乳製品、サバ缶、煮干し)ならびに動物性タンパク質を積極的に摂取するように説明するが、その上で炭酸カルシウム1g(カルシウム400mg)を上乗せして初期治療とする。

閉経期の場合には破骨細胞を抑制する目的でSERMを使用する。SERMとは選択的エストロゲン受容体モジュレーターであり商品名としてエビスタやビビアントである。詳しくは清書に譲るが、エストロゲン類似作用を示す薬剤である。これを使用することにより骨吸収を抑制する。

ビタミンDについては我が国では保険医薬品として天然型ビタミンDが使用できないので止む無く活性型ビタミンDを用いるが、プロドラッグであるアルファカルシドールでなく直接的に作用するカルシトリオールを最小量用いる。

骨粗しょう症の患者のほとんどは基本的に腎不全ならびに腎機能障害がないので、高カルシウム血症や異所性石灰化を回避するため最小容量を使用する。すなわち開始容量はカルシトリオール(商品名ロカルトロール)0.25μg/日である。

半年後に骨密度を再計測してみる。もし活性型ビタミンDとカルシウム製剤を併用した場合、1か月後あるいは3か月後などに血清カルシウム濃度を測定してみる。

半年後の骨密度検査で改善が見られない場合にはTRACP-5b(酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ)を測定し、SERMが破骨細胞を抑制しているか確認する。TRACP-5bが高値の場合にはSERMは無効と判断する。

SERMが無効であればビスホスネート剤にシフトする。ビスフォスネートはSERMより破骨細胞を強く抑制するので、低カルシウム血症を回避するためカルシウム製剤は併用必須である。(最近ではビスホスネートのGE医薬品もあり、こちらを優先する場合がある。)

また骨芽細胞を刺激するためにビタミンD剤も必要だ。何度も繰り返すが我が国では活性型ビタミンDしか使用できないので、まずはカルシトリオール最小量を使用する。

こうなるとビスホスネート剤、活性型ビタミンD、カルシウム製剤の3種類になり健康保険で査定される都道府県があるが、炭酸カルシウムを慢性胃炎の病名で投与すれば済む。アメリカでは骨粗しょう症の治療で炭酸カルシウムを使用している(メルクマニュアルより)が我が国では保険適応がない。

骨粗しょう症の治療の適応のあるアスパラギン酸カルシウムやリン酸水素カルシウムではカルシウム含有量が少ないので服薬量が多くなるので当クリニックでは使用していない。

ビスフォスネート剤は長期に使用すると効果がなくなるとされる。おそらく併用薬剤の活性型ビタミンDとカルシウム製剤の量の問題もあると思うのだが、もし骨密度が改善しないなら、デノスマプ(商品名プラリア)に切り替える。私見では最も破骨細胞を抑制する。

デノスマプは二次性副甲状腺機能亢進症を伴うような骨粗しょう症でもTRACP-5bから判断すると破骨細胞は抑制されている。(ただデノスマプの弱点は高価であることのみだ。)

デノスマプはデノタスという天然型ビタミンDとカルシウム・マグネシウムの合剤(カルシウム約600mg)と併用するのが基本であり原則だ。ただデノタスの適応はあくまで「デノスマプ使用時の低カルシウム血症の予防」であることを忘れてはいけない。

もしデノスマプを使用しても骨密度の改善が乏しい場合にはBAPを測定して増加の可否を確認する必要がある。BAPが低値を示すようなら、さらに炭酸カルシウムなどのカルシウム製剤を追加する。それで、しばらく経過を観察する。(多分、数年を要するはず)

もし、それでも骨密度の改善が乏しいようなら、さらに動物性タンパク質摂取を増やし、散歩などの運動刺激を増やすよう指導する。

以上が、骨粗しょう症の治療の実際である。ビスホスネートや活性型ビタミンD単独で骨粗しょう症が改善するか考えた場合、それは無効もしくは改善まで時間がかかり過ぎる。