閑話休題(話の前段として)②


個人的な話だが元々、私は仙台や大阪での生活が長く、しばらく田舎の生活に馴染めず仙台から通勤していた。だが肉体的に疲弊して、平日は田舎で暮らして週末に仙台に帰るというスタイルをとった。しかし週のうち5日ないし6日は田舎暮らしである。医者、特に田舎の開業医は孤独である。そして孤独な人間を癒すのは唯一、酒である。

若いころは、近所の飲み屋に顔を出したことがあるが、やがて止めた。都会で過ごしたこともあり、地域の人たちと全く話題が合わない。飲み屋で、どうでもイイような医療相談(例:親戚のオジサンの癌の話とか、自身の健康法とか)にも応じなければならないことも多々あった。それゆえ楽しみは診療所で一人酒を飲むことであり、それが高じて酒を極めることになった。私は利き酒師の資格を取った。

家族を仙台に残し、父親の残した診療所で母親との二人暮らしでの楽しみは、酒を中心とした趣味の世界(腕時計、靴、クルマ、古着など)に没頭するしかなかったのである。他人は簡単に酒を止めろというが、そんな心境にならないほど田舎の生活は辛く、私にとっては、まさに島流しの刑であった。

震災はさらに精神的な追い討ちをかけた。詳しい説明はしないが、そのストレスは想像にかたくないだろう。結果、以前にもまして酒の量が増えた。そして震災後、一時的に改善した血液障害が再発したのだ。

そこで当外来において、私と同じような血液障害を持つ者がいないか調べた。その結果、低γグロブリン血症、低IgG血症を呈する患者さんがいた。それは大半が糖尿病の薬物療法を行っている患者であった。他には、ろくにメシを食わない大量飲酒者、さらには整形外科で長期に渡り膝関節に注射(たぶんステロイド)を打たれている患者など10数名に、私と同じ血液障害が見つかった。

メルクマニュアルを参考にすると糖尿病、アルコール、ステロイドはリンパ球減少の原因になると記されているが理由については書かれていない。しかし糖尿病の患者や酒飲みの患者は沢山いるが血液障害を生じているのは、ごく僅かである。

特に糖尿病患者とアルコール多飲者の共通点は何かと考えた場合、唯一の共通点は低血糖である。それは恐らく夜間睡眠中の無意識下の命に別状がない程度の低血糖が関与しているのではと考えた。酒飲み、すなわちアルコール大量飲酒家と糖尿病治療中の患者さんとの共通点は低血糖を生じ得る点である。

糖尿病治療を行っている医者は、患者の活動中の低血糖の有無について耳を傾けるが、HbA1cに目を奪われ、夜間睡眠中の低血糖の有無について聞くこともなければ関心もない。ちなみにHbA1cは1~2か月の血糖値の平均を示す指標であり、24時間の血糖値を評価する指標でない。

もしも食後に300㎎/㎗以上の高血糖が存在し、かつHbA1cが6.5%以下で、さらに活動中に低血糖症状がないなら逆に、夜間睡眠中に低血糖状態が存在すると考えなければならなかった。

また非糖尿病の人間でも減量目的で糖質制限を行いながら大量飲酒の生活を続けると夜間睡眠中に低血糖状態に陥るのだ。すなわち糖尿病患者や大量飲酒者は、夜間睡眠中の無意識の状態での低血糖が原因になり、血液障害を生じているとの推察するに至ったのだった。

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