NASH(非アルコール性肝炎)に対する新治療

NASHとは非アルコール性脂肪肝による慢性肝炎で、ウイルス肝炎と同様に肝硬変から肝臓癌を併発することで話題になった。一般にウイルス性肝炎と異なりASTやALTなどのトランスアミナーゼは華々しく上昇しない。そのため肝硬変に進展していても気づかれにくい。特に飲酒習慣のない中高年以上の女性に多いので「慢性の軽度脂肪肝」程度で処理されている。

 

なぜトランスアミナーゼがウイルス肝炎より高くならないのか。ウイルス肝炎の多くは感染後ウイルス量が徐々に増加していくためトランスアミナーゼは上昇傾向を示し、ASTやALTは三桁を示す。ところがNASHではトランスアミナーゼは正常範囲より“やや”高い範囲で推移する。したがってウイルス肝炎は10年~20年で肝硬変に至るのに対しNASHでは、おそらく30年~50年で肝硬変に至る。

 

NASHの発症には生活習慣と食習慣が大きくかかわっており、夕食から就寝までの間に高カロリー(高炭水化物)食を摂取した場合、食事が有するエネルギーが利用されず体脂肪や内臓脂肪に蓄えられて生じると考えられる。特に夜は運動をしないのでエネルギーは肝臓に中性脂肪という形で蓄積するのではないかと考える。すなわち夕食時による高インスリン血症が存在した時に、血液中の中性脂肪がより多く肝臓に蓄積されるメカニズムと理解される。

 

ピオグリタゾンはインスリン抵抗性を改善する糖尿病治療薬だ。原理的には肥大した脂肪細胞を分割と小型化するため肥大した脂肪細胞から分泌されるTNF-αなどのインスリン抵抗性物質を減量せしめ、血中インスリンの有効率を改善させる薬剤である。つまりピオグリタゾンは高インスリン血症を是正しうる薬剤であるため、脂肪肝の進展を抑制できる可能性が高い。

 

またSGLT2阻害剤はインスリンを利用せず、腎尿細管から余分なブドウ糖を尿を介して体外に排出する薬剤である。すなわちSGLT2阻害剤を用いると、インスリンの必要量はさらに減少する。メーカーのデータでも血中ケトン体は上昇されており、これは体脂肪もしくは内臓脂肪が遊離脂肪酸に変わりエネルギーとして利用された証であり、脂肪肝にも十分効果が期待できる可能性が高い。

 

糖尿病を有しNASHと呼ばれる慢性脂肪肝を併発している場合、ピオグリタゾンとSGLT2阻害剤の併用療法は、この脂肪肝を改善せしめる可能性がより高いと考える。この2剤併用療法が糖尿病に合併したNASHの治療の新しいエビデンスになることを期待したい。