神経症性感冒(梅核気)

咽頭不快や嗄声、咳、痰のつまり、動悸、胸部不快などの症状で来院する患者がいる。その多くは「風邪が続いて治らない」と訴える。しかし発熱がなく、気管支炎のような激しい症状もなく、気道過敏性亢進を示すアレルギー疾患もないが何度も何度も来院を繰り返し、何らかの症状を訴える患者が少なくない。この患者にPL顆粒やトランサミン、ビソルボンなどを処方しても大概無効である。では、どのように対処するのか。有効な処方は半夏厚朴湯だ。

 

この症状に該当する患者は神経質であったり、精神的ストレスがベースにあることが多く、漢方用語で『梅核気(梅核球)』と呼ばれる症候に合致すると考えられる。梅核気は別名ヒステリー球とも呼ばれ、喉の奥に梅干しの種が引っかかって詰まっているような感じがする状態、または喉の奥に炙った小肉が詰まっているような感じがする状態(炙臠)とも言われている。もちろん部屋の乾燥や夜間無呼吸による舌根沈下が原因で喉頭の違和感を訴える場合もある。しかし、それ以上に食欲不振や胃部不快、不眠などの神経症的不定愁訴を多く有する場合が少なくない。

 

私はこれを『神経症性感冒』と名付け、半夏厚朴湯を第一選択薬として処方している。体重が減少するほど憔悴している場合は半夏厚朴湯にセルシンとドグマチールを併用する。また逆流性食道炎の疑われる症状が強い場合はPPIやH2ブロッカーを併用することもある。そして極めて重要なことは神経症性感冒を疑う患者に対して、血算とCRPをチェックした上で感染の可能性がないことを証明することである。なぜなら患者自身は相当重症だと思い込んでいるので「感染症学的に問題ない」としっかり説明しなければならない。

 

ただし半夏厚朴湯を用いても効果不十分、さらにセルシンとドグマチールの併用、またはPPIやH2ブロッカーの併用でも症状の改善が乏しい場合は耳鼻科で喉頭鏡検査を受けてもらうか、消化器内科で胃の内視鏡検査を受けてもらうよう患者に説明するべきだ。

 

 

‐補足‐

保険医薬品としての半夏厚朴湯の特徴ならびに適応症を紹介する。

半夏厚朴湯:

気分がふさいで、咽喉・食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴う次の諸症/不安神経症、神経性胃炎、つわり、咳、しわがれ声、神経性食道狭窄症、不眠症。