無症候性尿路感染症

尿路感染症というとポピュラーなのは急性膀胱炎であろう。症状は排尿時痛、残尿感、頻尿が特徴で発熱は稀である。また急性腎盂腎炎は高熱と片側の背部痛である。これらとは別に慢性尿路感染症というのが存在する。主訴として過活動性膀胱のように頻尿を呈することがあるが、基本的に無症状で長年経過する。ほとんどが高齢女性で、男性や若い女性は少ない。ところが、この慢性尿路感染症が牙をむく時がある。それがエンドトキシンショックだ。

 

来院時、発熱と低血圧さらに意識障害を伴う。この本体は大腸菌の毒素エンドトキシンによるショックなのである。高齢女性では慢性尿路感染症を有している場合が少なくない。慢性尿路感染症とは頻尿傾向はあっても残尿や排尿時痛はないことがほとんどだが、尿検査で赤血球陽性、白血球強陽性さらに尿沈渣で白血球多数、大食細胞陽性、細菌陽性の所見を得る。そして急激な発熱とショック状態を生じ外来に運ばれて来る。

 

血圧は心拍出量(1回心拍数×心拍数)×末梢血管抵抗で規定される。急性心筋梗塞などの心疾患などでは心臓からの駆出が突然低下する。また大量出血を生じた場合にも急激に心拍出量が減少し血圧が低下する。しかしエンドトキシンショックやアナフィラキシーショックでは末梢血管抵抗が急激もしくは緩徐に低下し血圧が低下する。似たようなものに神経原(源)性ショックがあるが、この場合には迷走神経反射により末梢血管抵抗が低下し血圧低下を招く。例を挙げるなら、注射や採血の際、顔面蒼白で貧血を生じる人がそれだ。

 

このような慢性尿路感染症から生じるエンドトキシンショックに似たものにタンポンショックがある。女性の生理用品であるタンポン使用時に、黄色ブドウ球菌の毒素エンテロトキシンが膣壁の創傷部位から血液中に侵入して突然ショック状態になる。特にタンポンを常用する欧米ではタンポンショックから致死に至ることが知られている。

 

アナフィラキシーショックでは発熱することはないが、エンドトキシンショックを呈している患者の中には発熱と体調不良ということで「ひどい風邪」と称して開業医を受診する場合がある。アナフィラキシーショックでは気道閉塞による呼吸困難や蕁麻疹などを呈している場合が少なくないが、初期には重篤ではない場合もあり、やはり開業医を受診することがある。蕁麻疹で受診して、そこからアナフィラキシー症状が出現することもある。

 

エンドトキシンショックやアナフィラキシーショックの際、開業医が外来で治療することは不可能である。ほとんどの場合、病院の救急外来へ緊急搬送すべく救急車を手配するようになる。もちろん末梢ルートを確保し点滴を行って、重症者の場合は救急車に同乗する。われわれ開業医が扱う感冒は多彩である。すなわち「感冒と称して簡単に受診する患者に気をつけろ」だ。

 

 

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