かくれ脱水症の話

三陸沿岸地域の老人は寝る時間が長い。三世代同居の家庭の老人や老夫婦二人暮らしの家庭の老人に、そのような老人が多い。三世代同居の老人は若夫婦と孫たちに遠慮して早く寝る。老夫婦の場合は起きていてもすることがないので早く寝る。問診で聞き取ると早い人は午後7時、遅くとも午後8時までには床に就く。さらに起床は必ずしも早くなく午前5時~6時ぐらいだ。やはり寝つきが悪く何度もトイレに起きたり、午前2時過ぎに目が覚めてラジオを聴いている老人も少なくない。

 

老人の寝過ぎは明らかに脳梗塞のリスクになる。生理学用語で「不感蒸散」という言葉がある。簡単にいうと尿や発汗さらに便中の水以外に皮膚と肺から失われる水分のことである。ちなみに皮膚からの不感蒸散は発汗と独立して生じており、1日300~400㎖程度、また肺(呼吸気道)からも300~400㎖程度生じているとされる。だから夕食後、早々に床に就いて10時間も過ごしていると冬期の電気毛布使用や夏期の暑さによる発汗量の増加や夜間尿なども合わせると脱水症から脳梗塞に至るリスクが高くなる。

 

当院の患者で昨冬、朝飯前に水分を補わずに、わたわたと漁に出て海の上で脳梗塞を生じた患者と朝食後すぐクルマに乗り込もうとして庭で脳梗塞を生じた患者がいた。朝方の脱水症の上、寒さや交感神経の過緊張が加わり脳梗塞や心筋梗塞を起こす場合も稀ではない。とりあえず脱水症は早朝だけでなく朝食を摂り、それに含まれる水と電解質が臓器に満ちるまでがピークなのである。

 

ところで痩せ遺伝子を有する人もまた脱水症を生じるリスクがある。『<減量>肥満遺伝子と痩せ遺伝子』でも記載したが痩せ遺伝子を有する人は多汗をかく。動物の多くは生命維持すなわち細胞を守るため体温を一定に保つ必要があり、摂取した余剰なエネルギーを脂肪として体に貯め込むか、発汗という形で熱にして放出するしかない。肥満遺伝子を有する人はエネルギーを体脂肪として容易に取り込むが、痩せ遺伝子を有するひとは体脂肪に取り込めず大汗をかく。大汗をかくということは、すなわち脱水症になりやすいということである。

 

いずれにせよ、脱水症とは体水分が体外へ失われるということであり電解質も等分に失われているのでペットボトルの水だけでは不十分である。対策はポカリスエットなどのイオン飲料やトマトジュースを寝る前に補給するか、睡眠途中の覚醒時に補給するか、あるいは朝目覚めに補給するか、いずれかなのである。個人的には寝る前にトマトジュース、朝にイオン飲料が良い。寝酒派はアルコール利尿による電解質喪失が大きいので飲酒後には塩分の多い昔ながらのトマトジュースが良いと考える。もし空腹ならカップ豚汁もありである。