浮腫と肺水腫そして漢方薬

主として細胞外液区分に水分が過剰に蓄積してむくんだ状態を浮腫と呼ぶが、これは体循環領域に関しての浮腫。全身の循環血液は四肢や内臓、脳などを廻る体循環系と肺と心臓を廻る肺循環系に分かれる。体循環系に浮腫はなくとも心弁膜症や心筋症など心臓の動きが悪くなると肺循環系に浮腫を生じる。これが、いわゆる肺水腫である。

 

甘草を含む薬剤は主成分グリチルリチンの薬理作用により腎尿細管でのナトリウムの再吸収とカリウムの排泄を促進するのでアルドステロンに似た作用を示す。この病態を偽性アルドステロン症と呼び原発性アルドステロン同様、細胞外液領域に浮腫、細胞内脱水から筋けいれんを生じる。

 

かつて慢性肝炎(肝硬変)や慢性腎炎(ネフローゼ)などに小柴胡湯や柴苓湯を用いたが、慢性肝炎や慢性腎炎の中には元よりアルドステロン高値を示す続発性アルドステロン症をしめす症例があり、これらでは病状を悪化させたケースがあった。

 

肝炎、腎炎、心不全などではアルドステロン分泌が亢進してナトリウムの体内貯留を促進することで循環血液量を増加させる。その結果、肝血流が増し肝細胞の修復が進み、腎血流が増した腎糸球体では濾過量が増え、心不全では心臓の動きの悪さを代償する。だが行き過ぎて肝臓では腹水貯留を、腎炎では浮腫を、そして心不全では肺水腫を悪化させた。

 

当時、慢性肝炎に小柴胡湯が広く使われていたが、不幸なことにグリチルリチン製剤の内服や注射薬を併用するケースが多く、GOT、GPTなどのデータは改善したが腹水は増加した症例もあった。中には肺水腫を間質性肺炎と誤診した例もあった。肺水腫の初期は間質性肺水腫であり、最終的には肺胞性肺水腫に至り心不全が完成するのだが、当時の消化器内科医は心エコーで鑑別する手段を持つ者が少なかった。

 

ところで筋けいれんに芍薬甘草湯を用いるが、誤った使われ方をしているケースが多い。ロキソニン、ミオナール、芍薬甘草湯の漫然長期使用である。ツムラの効能書きによると「急激におこる筋肉のけいれんを伴う疼痛」である。これすなわち頓服での使用である。偽性アルドステロン症を防ぐ点でも漫然投与ならび服用は回避すべきである。

 

では偽性アルドステロン症の原因となる甘草を含む芍薬甘草湯が、筋けいれんに何故効果があるのか、はっきり解っていない。グリチルリチンが尿細管に作用してナトリウムの再吸収を促進し一時的に細胞外液を増加させることが考えられる。障害部位すなわち炎症部位の血流を増加させることは組織の修復を促進すると考えられる。一方、芍薬は「筋肉が硬くなってひきつれるものを治す」とある。どちらかというと急性期には芍薬であろう。

 

 

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