インスリンとグルカゴン

生体内でブドウ糖すなわち血糖を調整するホルモンがインスリンとグルカゴンである。糖質の過剰摂取により高血糖がもたらせると膵臓よりインスリンが速やかに分泌され血糖値を正常化させる。この際、エネルギー活動に利用されなかった余剰なブドウ糖は中性脂肪に変換され血中をめぐり、最終的にインスリンの働きで体脂肪として蓄積される。

 

一方、絶食が長く続いたり極度の糖質制限を行った場合にはグルカゴンの働きで脂質やタンパク質から糖新生を行い、血糖値を上げる。また同時に蓄積した体脂肪から遊離脂肪酸が血中に出て肝臓でケトン体に変換されブドウ糖同様エネルギー活動に利用される。

 

糖質制限ダイエットでは血糖値が正常下限前後を推移していると考えられるので、常に体脂肪から遊離脂肪酸が出て常にケトン体がエネルギー源になる。それが糖質制限ダイエットのキモであり、糖質を許容するカロリー制限ダイエットより優位に体脂肪減少すなわち減量がかなうのである。

 

だだ、それでも体内のエネルギー代謝発現のナンバー1はブドウ糖であり血糖値が低値を続けた場合「体脂肪→遊離脂肪酸→ケトン体」のサイクルがメインになり、肉などを材料に糖新生を行って得られたブドウ糖は最小限の生命維持に利用されるだけであり甲状腺ホルモンT3はリバースT3に変換されたままになりT4正常かつT3低値のLowT3症候群になると考える。

 

例えば100%糖質ゼロの食事を続けても糖新生のおかげで血糖値はゼロにならないし、HbA1cもゼロにはならない。もし血糖値がゼロになったら遊離脂肪酸からケトン体が何十グラム出ようが人間に限らず動物は生命活動を維持できず死に至る。一般的な人間の血糖値は70~110㎎/㎗とされており糖質制限食でも50㎎/㎗を切ることはない。

 

 

追記

2014年、糖尿病治療薬として選択的SGLT2阻害剤が発売された。この薬は一種の利尿剤である。普通の利尿剤はナトリウムやカリウムなどを腎臓より排泄することによって体内の余分な水分を排泄する。この選択的SGLT2阻害剤は、これまでの利尿剤と異なりブドウ糖を排泄する。(詳しくは後述する)その際、血液中のブドウ糖が大量に失われるため血糖値が低下する。その結果、低血糖モードになるため体脂肪より遊離脂肪酸が大量に生成され、肝臓で代謝され血中ケトン体が増加する。もちろん、その前に膵臓よりグルカゴンの分泌が亢進し糖新生が生じる。症例によっては危険な薬剤なのかもしれない。